おはようございます。
今回は、日本の安全保障の将来像についての話しをします。
先ず、「吉田路線」に関して、戦後日本を代表する政治家の1人であった田中角栄氏の懐刀(ふところがたな)であった政治家の後藤田正晴氏の話からしましょう。後藤田氏は、警察庁長官、官房副長官(事務担当)を経て、衆議院議員になり、主として中曽根康弘首相の時に、内閣官房長官や総務庁長官を務められ、これまた、「名官房長官」の誉(ほま)れの高かった人物です。「カミソリ後藤田」の異名(いみょう)を奉(たてまつ)られることもありました。
その後藤田氏の述懐(じゅっかい)に次のようなことがあります。「私たちの世代が生きている間は、絶対、憲法には触れてくれるな」と。後藤田氏の経歴を見ると、警察官僚出身で内閣の要職を務め、「ばりばり」の「タカ派」に思われがちです。確かに、「治安」面では、そうだったかもしれません。しかし、こと「防衛」に関しては、「厳しい」政治家でした。もともと、戦前、東京帝国大学を卒業し、内務官僚となり、実際、第2次世界大戦で、兵士として従軍されて、生き残って、戦後社会に帰還された方です。その際の経験からでしょう。軍事に関しては、「控えめ」でした。消して「ハト派」ではありませんが。
私(代表取締役)もそうですが、いわゆる戦後世代で、実際の「戦争」というものを経験していません。中曽根首相が、イラン・イラク戦争だったか湾岸戦争の時に、日本も何らかの形で「軍事的貢献」をしたいとの意志を示した時に、後藤田官房長官は、職を賭してでも「反対」を貫き、中曽根首相を翻意(ほんい)させました。戦後の平和国家である日本の行く末を見据えていたのでしょう。時は、まだ米ソ冷戦の最中(さなか)です。戦争を経験したことのある世代には、共通の思いがあるのでしょう。
「靖国(やすくに)でまた会おう」と散華(さんげ)していった戦友たちへの思いが強いのでしょう。これまた、後藤田氏の愛弟子(まなでし)に当たる元警察官僚で防衛施設庁長官、内閣安全保障室長を務められた佐々淳行氏に、冗談交じりで、よく、こうおっしゃられていたそうです。「君も『産経新聞』に記事が載っているだけでなく、『朝日新聞』にも記事が載らなきゃ駄目だよ」と。
勇ましいことは、言うだけなら誰でもできます。しかし、世界で、戦争は、現在も頻発(ひんぱつ)しているのですが、戦後日本で、本当に「血」を流す覚悟を持っている人が、どれだけいるのでしょうか。「死」ということに、どれだけ実感を持って臨(のぞ)める人が、少なくとも戦争を経験したことのない戦後世代にいるのでしょうか。後藤田氏の危惧(きぐ)は、今後、どうなっていくのでしょうか。今回の話、次回に繋(つな)げます。現下の国際環境をどう捉(とら)えるかの話になります。
バーチュー・クリエイティング株式会社
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