現代社会における新「資本論」③

query_builder 2024/11/05

おはようございます。

マルクス主義の思想では、一つ、重要な概念があります。「史的唯物論」です。

これは、人間社会の上部構造、下部構造があるものとして考えた場合、「経済」が、下部構造であり、基盤であるとします。歴史の捉(とら)え方も、経済関係が原因として、こういう結果が生まれたとし、そこに、「人間」の「心的要素」は、出てきません。歴史に、「人物」がでてきません。

これは、マルクスという人の個人生活から、導きだされたものであるとの見方があります。マルクスには、殆(ほとん)ど友人がおらず、その数少ない一人で、後援者であったエンゲルスが、しばしば、マルクスに「抗議」の書簡を送っていたとされます。マルクスの父親は、度々、マルクスに、その人間関係について、注意しておりました。ある意味で、「孤独」な環境の中で、マルクスは、世界史に大きな影響を与えた、その思想を生み出したわけです。

確かに、マルクスのそういう個人的な生活とは別に、マルクスの見聞している、その時代の「労働環境」は、今から見ると、「悲惨(ひさん)」なものだったでしょう。10数時間にわたる労働時間で、児童労働もあり、また、社会福祉なども殆(ほとん)どありません。そういった状況下で、労働者は資本家に「搾取(さくしゅ)」されているから、「革命」を起こせ、というわけです。その気持ちは、分からないわけではありません。

西洋の哲学者に共通していることですが、その哲学者の「人格」と、その「思想」が一致していなくても、特段、問題視されることはありません。例えば、啓蒙(けいもう)思想家とされる、ジャン・ジャック・ルソーという人も、歴史に残る「思想」を生み出したわけですが、その「私生活」の破綻(はたん)振りは、相当なものだったそうです。おしなべて、西洋の近代の哲学者には、そういう傾向があります。

私などは、どちらかと言えば、「東洋思想」を中心に学んできたので、その思想家の「人格」と「思想」の不一致は、あまり賛成はしかねます。とは言え、マルクスが提起した「共産主義」という思想は、大きな歴史的影響を及ぼし、世界を動かしました。その背景には、そうしたマルクス自身の個人生活と、当時の社会環境と、「西洋哲学」の「性質」があることは、念頭(ねんとう)においていていいでしょう。

特に、古来からの日本に根付いた、生活観、社会観、人生観などは、マルクスの思想とは、相違するものが、多々あります。そうだとしても、戦後社会を見ても、米国人のGHQのニューディーラーが作り上げた、その基本構造には、マルクスの思想が、大きく影響しています。「日本の弱体化」、即ち、再び、日本が米国の「脅威」になることにならないようにすることを目的とした諸政策で、日本は「改造」されました。それには、賛否両面あります。「否」の側面はおいておいて、社会の民主化、自由化が図られたことは、否定できません。その肯定的な側面は、戦後社会に生きる者としては、嘉(よみ)すべきでしょう。

現代の日本社会におけるような、「国家権力」が、これほど「抑制的」な国は、世界の中でも珍しいくらいです。日本の伝統的価値観は別にして、日本人は「自由」と「平和」を享受(きょうじゅ)しています。確かに、戦後も、いわゆる「荒れた」時期はありました。戦後の混乱期、安保闘争、学園紛争、左翼過激派の破壊活動などなど、今の若い人には、想像もつかないでしょう。いわば、ノンポリ的な生活で、基本的には何も構わない、現代日本です。

長い世界史の中で、「共産主義」が、「猛威(もうい)」を振(ふ)るった時代は、そろそろ終焉(しゅうえん)しつつあるのかもしれません。ただ、今は、「権威主義国」と「民主主義国」が対峙(たいじ)している時代です。新たな、世界史の1章が始まっています。

マルクスの「人」と「思想」は別として、現代の世界や日本の社会に応じた新しい「思想」が生まれてもいいと思います。私が、今回のシリーズを、新「資本論」と名付けた次第(しだい)です。その一端を次回以降も続けます

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