こんばんは。
今回は、防衛省自衛隊が、どのように「運営」されているかについて、言及します。
よく、「文民統制」と言いますが、その要件については、以前の「国防論」シリーズで申し述べたことが、あろうかと思います。その中で、今回は、指揮権、監督権の問題について指摘します。
自衛隊の最高指揮官は、内閣総理大臣で、防衛大臣が、防衛省の長として、自衛隊を管理監督します。これらの地位につくのは、「文民」と呼ばれる人です。政府見解によると、①自衛官でない者、②軍国主義思想に染まっていない者、です。元自衛官でも、退官後は、文民になります。通常、国会議員の中から、選任されます。
防衛省にも、他の官庁と同様、政務3役といわれる役職が、あります。大臣、副大臣、政務官です。この人につくのも、文民で、国会議員が就きます。制度上、これらの文民政治家が、防衛省自衛隊のトップ層として、当該組織を束ねていることになります。
しかし、実情は、どこの官庁も同じなのですが、政務3役は、「御神輿(おみこし)」です。これは、良くない意味で言っているのでは、ありません。御神輿を担(かつ)ぐ人がいなければ、「祭り」は成り立ちません。それが、通常、「官僚」機構です。防衛省の場合ですと、内部部局や各幕僚監部、防衛装備庁などになります。これらの各部門が実務を司り、日常の業務を遂行しています。
防衛大臣を直接補佐する純粋な意味での役所は、内部部局ですが、事務方トップは防衛事務次官としても、制服トップは、統合幕僚長であり、自衛官の組織体も、防衛省の場合は、官僚機構の内に入れてもいいでしょう。
一昔前は、「文民統制」と言うよりは、事実上、「文官統制」でした。内部部局等の事務方の役人が、制服組を、統制していました。戦後の自衛隊の発足の経緯により、戦前の反動から、制服組に対する世間の警戒感が強かったからです。
それが、本来の文民統制にそぐわないということで、組織改革が行われ、いわゆる自衛隊の「運用」については、制服組が主体となる組織が行うこととされ、統合幕僚監部が創設(統合幕僚会議を改組)されました。そこに運用が一元化されたわけです。統合幕僚監部には、自衛官だけではなく、事務官等も勤務している、制服組と文官の混合組織です。
現在は、事務方と制服組は、対等の存在とされ、それぞれが、政策面と軍事面で防衛大臣を補佐する仕組みとなっています。ただし、どちらかと言えば、いまだ、文官統制の名残(なごり)はあるでしょうか。国会答弁などの対応は、全て、内部部局が行っています。これは、実際問題としては、制服組が、国会の質疑などの対応をするのは時期尚早(しきそうしょう)と思われるからです。
と言いますのは、現在の国会での質疑は、米国議会の公聴会などと違って、制服組が、直接に答弁する場としては、適していないと思われるからです。「軍事」が正当に評価され位置づけられている主要な民主主義国と異なり、軍事に対する「偏見」がいまだ残っている日本においては、国会で、質疑の矢面(やおもて)に立つのは、事務方である役人の方が望ましいという判断からでしょう。
その国会答弁を、実際に内容を検討、作成しているのは、内部部局などの事務方の役人です。そこで作成した原案を、大臣に説明し(「読み合わせ」と言います。)、大臣が、それに基づき国会で答弁し、また、事務方が、政府参考人として、補足の答弁をしているわけです。直接の原案を書いているのは、「部員」と呼ばれる役職についている、役人です。「部員」というのは、防衛省の独特の言い方で、他の役所に照らせて言えば、「課長補佐」以下の立場にあるものです。「先任部員」と言われるのが、課長の「次席」に当たるポストで、「部員」とは、課長補佐クラスから、係長クラスに相当するランクのポストの混合です。もともとは、何故、「部員」と言う名称をつけているかと言えば、戦前の参謀本部の「部員」になぞらえたものだとされています。自衛隊は「軍隊」ではないとは言え、その名残をとどめているわけです。
いずれにせよ、統合幕僚監部は、自衛隊の「運用」を、陸海空の幕僚監部は、各自衛隊の管理監督を行っているわけで、後者は、自衛隊のフォース・プロバイダーとして位置づけられます。そういう形で、防衛大臣に対する軍事面での補佐を行っているわけです。
そして、防衛省が、防衛大臣以下、一体となって、自衛隊の管理監督を行い、日常業務を遂行し、自衛隊を運営しているというのが、本来の姿ですし、そうあって欲しいものです。
では、現実の状況はどのようなものなのでしょうか。
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