現代の情報化社会におけるジャーナリズム論⑦

query_builder 2024/10/03

こんにちは。

今回は、最近の「時事ネタ」から、論じてみたいと思います。

9月27日に自由民主党の新総裁に石破茂衆議院議員が選出され、10月2日に衆参両院本会議で第102代内閣総理大臣に指名され、皇居での認証式を経て、石破内閣が発足しました。

石破首相は、国会での指名に先立つ10月1日に党三役の抱負表明の席で、衆議院の解散総選挙について言及しました。これに対して、野党やマスコミから大きく2つの批判がありました。第1は、国会での総理指名前に総理の解散権を表明するのはおかしいのではないかというもの、第2は、石破首相は、総裁選において、国会での審議を十分に行ってから解散総選挙を行うべしと言及していたのではないか、というものです。

前者については、確かに、「筋論」ではあります。自民党総裁が、現在の国会議席の配分から新総理に指名されるのは明らかですが、総理に正式に指名されてから、その意思を表明せよ、というのは尤(もっと)もなことです。その点、先走りの感は否(いな)めません。石破首相は、選挙管理委員会の事務の都合上、と説明していますが、とってつけたような理由です。後者については、どうでしょうか。実は、石破首相が、総裁選の決戦投票で勝利するに当たっては、二人の某有力政治家の支持によるところが大きかったと言われています。その人達から、早期の解散総選挙を行うことを強く助言されたことが、今回の早期解散の意思表明に繋(つな)がったと言われています。それで、石破首相は「フライング」は承知の上で、その意向を表明したものと思われます。

そう言った助言と決断に至った理由は、多々、あるでしょう。政権発足直後の「新鮮さ」があり、支持率が確保されている間に国民の信を問うた方がいいというのが、表の理由でしょう。一方、予算委員会などの審議を経ていれば、新内閣には初就任の閣僚も多いことから、答弁に窮(きゅう)する閣僚も出るかもしれないという危惧(きぐ)の念があり、また、新閣僚の「スキャンダル」めいた話しがでるかもしれないとの懸念があることなどが、裏の理由でしょう。できるだけ「ご祝儀相場」のうちに、選挙を行うのがベターとの判断で、今回の決断に至ったものと思われます。それで、総裁戦時の言を翻(ひるがえ)されたわけです。これが、一点目の論点です。

次に、昨日の植田日本銀行総裁との面談を経て、当面、日銀の金利の引き上げは行わないとの意向を表明されました。これで、金融市場は、一気に「円安株高」モードに復調しました。総裁戦時は、石破首相は、金利の正常化を打ち出し、必要な利上げはためらわないとの意向を表明されていたので、石破新総裁誕生の時には、いわゆる「石破ショック」言われる現象が置き、「円高株安」に市場は、動きました。これを、首相就任後、方針を翻(ひるが)えしたわけです。これも、主としてマスコミの論調では、言行不一致だとして、批判的なトーンです。これが、二点目の論点です。

これを、国民としては、どう考え理解したら良いのでしょうか。

実は、政界には、一つの「格言」めいたものがあります。それは何かというと、「首相は、衆議院の総選挙の解散権の行使と『公定歩合』の上げ下げについては、いくら『嘘(うそ)』を言ってもいい」というものです。これが、まさに、今回の石破首相の判断と決断の背景にあるのです。

「政」は「正」なりとも言います。基本的に、政治の中に「偽」はあってはなりません。政治家なら「公約」に掲げたことは、それで「信」を問うた以上、可能な限り守るべきです。でないと、「言行不一致」の批判を受けても仕方ないし、「ぶれた」姿勢を示すと、支持率が下がります。しかし、先程述べたように、日本政界では、首相が「嘘」を言ってもいい場合がある。今回の事例で言えば、「早期の解散総選挙」と「当面、利上げはしない」という決断です。

政治は、「生き物」です。「堅すぎる頭」で、当初の方針に固執(こしつ)しなくても、この二つの事例の場合はいいのです。臨機応変に、政治の状況、経済の状況を見て、判断していけばいい。そこに、選挙を睨(にら)んだ、政治的な思惑(おもわく)があってもいい。「政治家」には、「ステーツマン」と「ポリティシアン」の両面が必要なのです。「政策」と「政局」は、表裏一体(ひょうりいったい)です。国家の滅びる要因として、「四維」(偽・私・放・奢)ということが東洋の古典に言われており、「偽」はできるだけ行わないことが望ましいのですが、また、「嘘つきは泥棒(どろぼう)のはじまり」とも俗に言われますが、「衆議院の解散総選挙」と「金利の上げ下げ」には、いくら「攪乱(かくらん)」作戦を採ってもいい。それは「総理の大権」であり、「伝家の宝刀」です。その決断の結果がどうなるかは分かりません。成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。その結果には、石破首相は、自ら「責任」を負わなければなりません。

ということを、私は、今回の事例で思いました。国民の皆さんも、いろいろな受け止め方をされるでしょうが、その理解の一助にしていただければ幸いです。石破首相の「賭(か)け」はどういう転回を見せるのか。注目したいですね。

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